ScrapBook
野鳥の声
野鳥動画
イベント情報
列島縦断野鳥情報

> HOME > FEATURE PROGRAMS > 2023-09
2023年9月号

 

 

1 2 3
 
わざわざキャンプがしたい!
 「鳥見するのにわざわざキャンプをしなくたっていい」そう言われては元も子もないが、夜の鳥の声を仲間と食事をしながら楽しんだり、早朝4時から鳥の声で飛び起きて鳥見に向かう体験は、ホテルやロッジよりも鳥との距離が近いキャンプでしか味わえない。ぜひ、仲間とキャンプにくり出してみてほしい。常在戦場の心を忘れなければ、不意打ちで現れるヤマセミ、もといスペシャルな鳥を観察できるかもしれない。
 
キャンプ鳥見で実現する、ぜいたくな時間の使い方
 ルリビタキのさえずりで目を覚ます。時計を見ると3時49分。鳥たちの朝は早い。テントから抜け出し、支度を終えて、同行メンバーと連れ立ってすぐに探鳥へとくり出した。
 
コサメビタキ。キャンプ場と戦場ヶ原両方で見られた。口を大きく開いてさえずる様子や、ほかの個体と争っている姿がよく見られた(S)
 

 菅沼キャンプ村の目の前には白根山の登山道がある。この周辺は前日からコマドリの声が聞こえているスポットだ。「ドドドド」とヤマドリの母衣打ちの音が響く林道を進む。ルリビタキやコマドリの声を頼りにあたりを探すも、やぶの中に隠れてなかなか姿を捉えられない。何とかひと目見られぬものかと歩いていると、目の前に現れたのは亜高山帯では珍しいキビタキの雄だった。ルリビタキとキビタキが同時に見られるのは、標高1700mという「亜高山帯のはじまり」ならではのことだろう。予想外の出会いだった。

 
ニュウナイスズメ。「声や鳴き方はほとんどスズメだけど、しっかり聴くと確かに違う」という絶妙な違和感が楽しい。付近には営巣していると思われる木もいくつか見られた(B)
 
 チェックアウト後は、日光方面へ向かう。戦場ヶ原は標高にして300mほど低く、針葉樹林から草原へと環境も大きく変わるが、移動時間は車でわずか15分ほどだ。大きくひらけた視界は先ほどまでとは別世界。草原をスコープで探すと、かん木にノビタキとホオアカの姿を見つけることができた。晴れた木道を歩くと、湯川の岸沿いではアオジやアカハラが気持ちよさそうに水浴びをしている。続いて、頭上でムクドリのような声がしたのであたりを探すと、正体はモズ。平地で見るよりも全体的に淡く頭が灰色に見える、これぞ「高原モズ」という個体だ。久しぶりに出会えた姿にしばし見惚れた。帰り際、駐車場へ到着間近の地点で、至近距離でカッコウが鳴きはじめるおまけつき。なんとか見ようとしたが、尾羽の端っこを捉えたメンバーがいたくらいで写真は残せなかった。
 
高原モズ。分類上はモズだが、高原にすむ個体群は色が薄く、通称でそう呼ばれている(B)
 
 ざっと半日程度で、亜高山帯の針葉樹林と高地の草原と、まったく異なる環境で鳥見ができたのも、探鳥地間近に腰を据えるキャンプならでのぜいたくな楽しみ方だろう。(文●新橋拓也)
 
アカゲラ。ばらばらと木片が落ちてくるので見上げたら、一心不乱に穴を開けていた(B)
 
1 2 3 4
> HOME > FEATURE PROGRAMS > 2023-09