傑作を撮るには 「背景写真家」の鳥撮アプローチ法 【水中伸浩】
文・写真 水中伸浩
私にとって「傑作」とは?
あえて珍しい鳥を撮りたいとは思わない僕にとって、鳥の種類で作品の良し悪しや価値は決まらない。たとえ身近な種であったとしても、大好きな野鳥をいかに魅力的に見せるか、またはどれだけ美しい1枚に仕上げられるか、そこが何よりも大切なポイントだ。そのうえで狙い通りの、自分なりの表現が満足できる形に昇華できれば、それこそが自分にとっての傑作と呼ぶに相応しい。
では、何を考えて撮影しているのか?間違いなく最も重視しているのが背景である。背景から一切の不要物を取り除き、すっきりと鳥を浮かび上がらせる。僕の作品作りの基本はこれだ。そこに自分が表現したいイメージに合わせて、周囲の環境の中から必要最小限のオブジェクトを加えていく。いわば背景とは単純な選択ではなく、イメージして作り出すものとでも言えばよいだろうか。

鳥がいなくても観る・撮る
背景を作るために意識していることとして、まずは撮影現場の環境をじっくりと観察する。そしてイメージを具現化するために、背景から排除したいもの、活用したいものを見極め、その位置関係を頭に入れておく。そうしておくと,瞬時に背景を決めなくてはならないような場合、すばやい判断の助けとなってくれる。構図を迷っているうちに鳥がいなくなった、といった残念な結果を減らしてくれることにもなる。

何度か通っている現場なら、鳥の動きが読めてくることもある。そんなときは、よく止まる場所、よく飛翔するコースの背景をしっかりと追い込むことができる。例えば特定の枝に止まるとしよう。ファインダーをのぞいて背景を確認する。わずかに(靴の幅1歩分ほど)右に移動しファインダーをのぞいてみる。これだけで背景が変わることもある。少しずつ左右に移動し,ベストな背景が得られる撮影位置を追い込む。高さ方向も同じように少しずつ変化をつけながら試してみる。また、太陽の位置によっても背景の見え方は変わるので、その点も考慮して臨機応変に対応する必要がある。
